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新英語教育研究会神奈川支部HP

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会報No. 119 通訳トレーニング

●実践報告(高校):「通訳技術で教員の英語力ブラッシュアップ!」
          冠木[かぶき] 友紀子さん(成城学園高校)

 自己紹介を英語通訳する。ストップウォッチで「45秒。では通訳、お願いします」。参加者、ドキドキ。それに続くShadowingではしどろもどろ。いい刺激になった報告でした。

?冠木さん
・ レポーターから:教材研究や学級運営に追われる教員は自分の勉強を後回しにしがち。でも通訳訓練法の応用で通勤電車が勉強部屋に早変わり。今回はワークショップ形式で生徒の緊張を味わって頂きます!
・ 日常での工夫:自分のPCの「お気に入り」に英国首相官邸、ホワイトハウス、いくつかの報道機関のサイトを登録しておき、ネットにつなぐたびにチェックして新しいスピーチに目を通す。それからBBC、CNNは流しに立っていても正面に見えるようにTVを置いている。「昔の、お母さんが居間に背を向けて壁に向かって料理していたような台所は私には拷問です。」とのこと。

?参考
・無料:NHKラジオ第2放送 午後2時/午後11時の英語ニュース(15分番組)
・速い:『ニュースフラッシュ』(CDとスクリプトのセット  BBC VOA AFN)
  2003年度版まで発行ずみ アルク 1400円
・簡単:『ニュース英語のリスニング』 森田勝之 編著 DHC 2816円
・『トレンド日米表現辞典』小学館(通訳者は全部暗記、だそうです…)
・ 『会話作文英語表現辞典』ドナルド・キーン 羽鳥博愛 監修 朝日出版社

?通訳ゲーム編
Task 1 No Time to Waste(時間との戦い)
【やり方とポイント】
・ 「日本語で1分以内の自己紹介をしてください。英語力を高めるためにしていることについて必ず触れてください。」という指示のもと、参加者は日本語でメモを書き始めた。
・ 1人が指名され「~さんの自己紹介のメモをとってください。」ということで、その人が日本語で話した内容を残りの全員が日本語でメモを取った。冠木さんはその間、ストップウォッチで計り「45秒でしたから、英語の通訳はその1.2倍でお願いします」と言って、別の1人を通訳として指名。その人が通訳した。
・ メモを取るときは三角形に:情報は「階層」になっているので、三角形にメモを取る。通訳し終わった箇所に×をつけていく。シャーペンで書くと手が疲れるので、なめらかなペンを用いる。

        子どもは3人         
            2人は結婚。     
            1人は未婚。
                家にいる。   



          スポーツが好き
              水泳
              テニス
              ジョギング



【チャレンジ1】Kさんの自己紹介をWさんが通訳する+冠木さんのアドバイス
Kさん:「茅ヶ崎市立~中学で教えている。趣味は水泳、テニス、ジョギング。英語の勉強はテレビ・ラジオ。学校の総合の授業でハングルをやるので10月からラジオを聴き始めた」
【冠木さんのアドバイス1】
・ 内容は正確に:(I teach at Chigasaki Junior High Schoolと言っていたが、それでは校名になってしまうので、不正確。校名を聞き落としたのであれば)
I teach at a junior high school in Chigasaki.と言うとよい。
・ 主体がはっきりしない場合には受動態で逃げる:(Kさんは「総合の授業でハングルをする」と言ったが、実際に教えるとは明言していなかった。そこでIユm going to teach Hangelノと言うと不正確になるので、受動態を使って)
Hangel lessons are being offered next year.「来年ハングルの授業がある」と言うとよい。
・ 人を主語にしたスタイルが自然:(My hobby is swimmingノではなく)
I enjoy sports; swimming,ノのように言うとよい。

【チャレンジ2】Kさんの自己紹介をHさんが通訳する+冠木さんのアドバイス
Kさん:「私立中高。授業研究している。雑誌のレポートやもらったレポートを応用している。子ども2人は結婚。1人残っている。世話しなくていいので、趣味の音楽やダンス、演劇をしている。ギターを始めた」
【冠木さんのアドバイス2】
・「見出し」をつけてから具体例へとつなげる:「子ども2人は結婚。1人残っている」のところは、Three of my children are all rather independent; two are married and one is staying at homeノ「3人の子どもは手がかからなくなっている」と先に述べ、そのあとに「2人は結婚。1人は家にいる」と言うとよい。

【チャレンジ3】Eさんの自己紹介をNさんが通訳する+冠木さんのアドバイス
Eさん:「教職は20年。中3担当。朝日ウィークリーやペーパーバックを読んでいるが、時間がなくてなかなか読めない…」
【冠木さんのアドバイス3】
・人を主語にしたスタイルが自然:(「教職は20年」をMy career is 20 yearsノではなく)Iユve been teaching English for 20 yearsノのように言うとよい。

Task 2 Good Notes
【やり方とポイント】(ふさわしいメモ書きとは?)
・「私が簡単に最寄り駅から成城学園までの道順を説明します。メモをとってください。」という指示のもと、参加者は日本語でメモを書く。指名された人が通訳。
・ポイントは「道案内なので、メモを取る場合にイラストで描くとよい」(参加者ではS先生のみがイラストで描いていた)。
・道案内に基本的な表現を使いこなす:T字路(T-junction)/正門(the main gate)/~に向かって歩く(walk on for ~)/~までいく(...until you come to ~)

訓練編 
Task 3 Sight Translation
BBCサイトから メJapan awaits Bush Arrivalモのスクリプトを冠木さんが読み上げ、その後を追って同時通訳に近い形で通訳していく。ポイントは「後から軌道修正できるような可能性を残すように心がけること」。

Task 4 Shadowing
・CD 42「イラク、対英米抗戦を活発化」(1999/1/21の記事:「ニュースフラッシュ BBC」アルク)のスクリプト+CDを用意
・ペアワークで1人がCDに合わせてShadowingする。もう1人がスクリプトで発音できなかった箇所をチェック。

?通訳の現場
ニュース番組チェック:冠木さんがされている、海外の放送局(イギリスBBC/アメリカFOXなど)のニュース映像分析を紹介。「アメリカFOXテレビはemotionalな印象を与える報道なので日本NHKから『報道姿勢に偏りがある』とクレームを入れた」という話があった。
希望 希望的企画
*日本の放送にもっと多重放送が増えること。
*教員をメンバーとする通訳ボランティア組織ができ、長期休暇などで活動すること。

■レポーターの感想
 皆さんの真剣な参加、とても嬉しく思いました。でも、実際の通訳的訓練まではほとんどたどり着いていませんね(苦言:少なくとも教科書に出てくる表現は「アクティブに使える表現」にしておいてはいかが。)ぜひ、今回の分として用意してきたものをさらに数回分にわけてまた機会を頂きたいと希望しています! それにしても、英語教師という職業の課する「語学力」と「指導力」の枠にはなんだか自分がゆがめられるような思いがしたことはありませんか? せっかく学んだものをどこかにおいてきた気がしませんか?(通訳は逆。)そんな思いを掬い上げ、できれば学校外でも力を役に立てるにはどうしたらよいでしょう… また新たな課題をつきつけられた気がします。ありがとうございました。また続きを!

■参加者の感想
□ 勉強になる例会の3時間でした。私もせめて英語ニュースを聞かなければ生徒たちに教えられないと思いました。
□ 自分に厳しくないとだめだなと思い知らされました。
□ いやぁ、緊張しました。でも、快い緊張感。これからの勉強の方向性が出来、感謝。
□ 通訳技術が時間勝負であることはあまり意識がなかったです。いかに時間をかけないでいうかなど、簡潔に言うことで引きしまった英語表現になると思いました。通訳のメモのとりかたは、とても参考になりました。どう時間をかけないで表現するかというワークショップもあると今後いいなあと思いました。道を案内すること、これもあなどれないと思いました。区切って意味をとることについても流れるように意味を取る、通訳する方法を学べてよかった。リスニングの力がなかなか付かないので、あきらめ気味のところがありますので、そういうことも聞きたいと思いました。
□ レベルが高い! Shadowingは聞き取りでついていくのがやっとで、口が開くのは明確な句のみでアーァです。
□ 前半に伺えずに残念でした。ワークショップ的にいろいろな手法を紹介していただけたようで楽しそうでしたね。
□ 最後の10分ぐらいしか伺えず残念でした。教師も勉強しないとダメですね…
□ ブラッシュアップ、本当に大切ですね。たまに勉強してもすぐに忘れてしまって「10代、20代だったらならば…」と悔やむばかりです。でもめげずに頑張ります。
□ 通訳ゲームで極意の一端を体験して刺激になりました。月に1~2回でも生の英語(on wire)を訊いて集中することが必要ですね。学生時代みたいにはいかないけれどちょっと再開してみようと思いました。


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